BMW走りの秘密

2007年02月04日


2007/02/03
BMW走りの秘密

かつて優雅で上品だった走り味はいまは力強く機敏で鮮烈になった!!

 BMWの走り味は、彼らが看板にする直6エンジンによく似ていました。

3シリーズで言えば80年代のE30あたりまでのクルマは、いかにもドイツ物の機械らしく緻密にして重厚。しかし、それでいてすべてが極めて滑らかに動く。エンジンもそうならアシもそう。ボディ上屋はハンドルを切るとスーッと動きます。

動くけど、煽って押さえが効かなくなるところまではならない絶妙の寸止め。ところが、そういう風に優しく振舞っていながら、結果としてクルマは驚くほど高い限界で走ってしまう。BMWは「スポーティだ」と昔から言われてきましたが、同じスポーティでも力ずくのスポーティではなく、とても優雅なスポーティだったのです。


 それが90年代に入って少々印象が変わります。かつての重厚さが軽やかさにとって変わったのです。重量配分の適正化とリヤサス能力アップ、そして大きくなった車体サイズを補うべく図られた懸命の軽量化。こういう技術的変化もあって、BMWは硬質感のある軽快な印象になりました。一方でアシは依然として滑らかによく動いて優雅な身のこなしは相変わらず、走りに極めて精緻で繊細な感触が乗るようになったのです。
それは、ちょうどその頃、彼らの直6の主役になったDOHC版ライトシックスによく似た味わいでもありました。


 しかし21世紀、BMWの走り味は再び変わりました。今度の変化は甚大です。滑らかによく動いていたアシが、動かない方向の仕立てになったのです。
 恐らくその根本原因は、衝突安全性を確保するために車体がさらに大きくなり、それゆえボディが正直に重くなったこと。重いボディを支えて、それを敏捷に走らせるには、グリップのいいタイヤと硬めたアシが要る。考えてみれば当然の成り行きですね。
そしてアシを硬めたBMWは、かつてのように優雅な身のこなしではなく、車体を動かさずビシッとタイトに押さえ込んで、力強く曲がる感触になりました。なかでも1シリーズと3シリーズで、その傾向がはっきりと伺えます。


 それに伴って乗り心地も一変しています。以前は動くアシがしっとりとして快適な乗り心地をもたらしてくれましたが、今のBMWはランフラットタイヤの標準装着も手伝って、乗り心地がはっきりと硬くなっています。


 操縦性も微妙に変化を見せてます。以前のBMWはリヤを積極的に外に振り出せるシャシーになっていて、そこが腕自慢のドライバーに好まれた理由でもありました。しかし現在のBWMのシャシーの傾向はリヤがやや優勢で、なかなかお尻が出しにくいものに。
ただしそれは出力の小さいモデルの話で、大出力モデルでは、そのパワーでリヤを振り出してドリフト姿勢に持ち込むことはちゃんと出来ます。このあたりは、何が何でもリヤは出させないベンツとは違ってBMWらしいところではあります。ある意味でこの変化は、年々増していくエンジンパワーに対応したものだとも言えるのかもしれません。

 でも、そういう性格のシャシーだと人は「アンダーじゃんか」と不満を言うかもしれない。そこでBMWは、ハナの動きを機敏に感じさせるため、ハンドルを切ったときの前輪の反応を上げてきた。かつては上品に穏やかだったその反応は、今はビビッドで強力です。


 BMWのスポーティは、かつては優雅で上品だった。しかし今は、力強く機敏で鮮烈になった。ある意味では分かりやすくなったとも言えます。追撃してくるベンツやアウディをそうやって分かりやすい走り味でアピールすることで振り切ろうとしているのでしょう。


(GooWorldより転載)

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