2016/05/28
青木 正幸の独り言・・・EMS in CHINA 四日目編 |
|
4日目
今日は待望のサーキット。会場はホテルの窓から見える距離。
「サーキット会場は非常に混雑しています。 スリもいるので貴重品は絶対持ち歩かないこと・・」
トミーのアドバイスに緊張が走る。
そうここは日本ではない。 忘れかけていた。
この三日間常にリンキーレーシングのメンバーと一緒に行動していたため不安に思う出来事は無かった。
でかい!!
富士スピードウェイよりはるかに施設は豪華。
すでにF1サウンドが聞こえている。
無類のスーパーカー好きの淳は既に満面の笑み。 そういえば駐車場で耳栓を売っていた。
関係者バスを渡されいきなりピットに案内された。
そこにはレーシングチューンされた、ランボルギーニウラカンGT3が12台。
リンキーレーシングのウラカンGT3は2台だ。
一際目立つカラーリングのラッピング。 ただ間近でみるマシンはリップスポイラーやフェンダーに損傷があり、ガムテープで応急処置されていた。
圧巻だ。 レーシングカーが目の前にある。
触ることも出来るのだ。
レースに備えエンジンに火を入れているマシンも。
この匂いと音。
鳥肌が立った。
コースではアウディR8の試合がまさに始まろうとしている。
じゃあ次はVIPルームに案内するよ、とトミー。
ガラスごしにサーキット会場を見下ろすそのスペースは約百坪。
ケータリングも充実。正に特別な空間で、レースクィーンの待機場所でもある。
あーこれが本物のレースクィーンか。
失礼ながらオートサロンのイベコンとはレベルが違う。 違う星の生き物かと思うほどの手足の長さ。
九頭身は確実にあるだろう。
いよいよランボルギーニのレースが始まる。
コース場に入れるのは限られた人のみ。
Come on, Let’s take a picture!!とトミー。
あと数分でレースが始まるのに大丈夫?
そう思いながらも有馬さんの腕をつかみコース内に。
感じたこともない優越感だ。
ポールポジションからスタートした決勝レース。
一斉にスタートしたときの爆音、、いや快音だ。車好きにとっては。
約30分間の耐久レース。
メインストレートでは時速300キロ近く出ていたかも。
結果は残念ながら二位。
チームは落胆の色を隠せない。
それにしてもリンキーレーシングの財力には驚いた。
後に聞いたところ、リンキーレーシングの会長は地元杭州では名士中の名士。
政治、経済において多大な影響力を杭州に与えた功績を評価され、中国国家から一族の銅像が寄与されたほど。
ありえない、日本では。
その会長が有馬さんが撮影したエボi8をネットで見つけたのが昨年12月。
会長の指令でエボi8を東京オートサロンに見にきた、リンキーレーシングの社長と営業責任者のトミー。
オートサロンでの話に一切の誇張はなかった。
いや明らかに話以上の会社だった。
現金もって買いに来ているリンキーレーシングに対して、我々は疑いの眼。
どうせコピーするんでしょと。
売っても良いけど、あなたたちの会社概要を提示しろ。
まずはそこからだ。
そんな高飛車な対応に嫌な顔ひとつなし。
話が大きすぎたから信用できなかった。
しかし現実は話以上だった。
あれから半年。
リンキーレーシングは大量のパーツを購入してくれている。
すべて前金で。
お客様は彼らのほう。
本来なら我々が感謝の気持ちを込めて、もてなしをする立場。
それなのに彼らは私たちに対して最上級のもてなしをしてくれている。
この旅では一元も使っていない。
コーラ一本、単3電池の代金さえ払わせようとしないのだ。
見返りを期待しているそぶりさえ感じない。
旅の二日目からずっと考えている。
モノやカネではなく、この恩をどうして返そうかと考えている。
彼らが用意してくれたVIPルームで。
時刻は16時。
じゃあ今日は上海市内のホテルだ。
チェックインして荷物を置きに行こう。
そして少し早いディナーだ。
どうやらトミーはこの5日間のスケジュールをすべて頭にたたきこんでいるようだ。
きっと自分で考えてくれたのだろう。
ディナーは今夜も鉄火鍋。
トミーいわく、昨夜の鉄火鍋店は大衆店。
今夜は高級店。 いっぱい食べよう。
レース場の駐車場に徒歩で移動中に淳が叫んだ。
SVや! アベンタドールのSVや!
トミーには見慣れたランボルギーニなのか素通り。
淳がさっきより大きな声で叫んだ。
うわ!! ラ、フェラーリや!!
中国には二台しかないはずの一台らしい。
プレミアプライスは7億円。
それが目の前に。
あっ、それ。
そのフェラーリはリンキーレーシングのドライバーの愛車。
ほらさっきウラカンで試合してた彼の車だよ。
もう完全に意味不明。
最高の自慢ポイントではないの?
淳が見つけなければスルーしてた感じだった。
レーシングマシンを多数所有する彼らにしたら大したことがないのか。
広大な敷地のため駐車場までは徒歩で二十分。
その途中、トミーと通訳のしょうさんが真剣な顔で話している。
もちろん中国語のためわからない。
しょうさん、、、
社長、トミーが言っています。
リンキーレーシングをエナジーモータースポーツの代理店にしてもらえないかと。
リンキーレーシングの希望は初めて会ったたときからそうだった。
でも我々が乗り気でなかっただけ。
ぶれない意向に感激した反面、この4日間のもてなしはやはり仕事だったのかと少し寂しく感じた。
冷静に考えればわかること。
我々は六名もの大人数。
リンキー側は四名。
総勢十名。 一回の食事だけでもかなりの金額。
宿泊はすべて高級ホテル。
目が覚めた。
若いスタッフ同士、英語でジョークを交えずっとはしゃいでいるが、この旅は紛れもなく仕事だ。
しょうさん、トミーに伝えてほしい。
リンキーレーシングの気持ちは我々に十分伝わっています。
契約に関しては帰国してから、砂田様経由で返答します。
本意ではない返答だ。
自分らしくない。
いつもはなんでも即決、感性を重んじる性格なのに、意に反した歯切れの悪い回答。
やはり海外取引が初めてのため慎重になってしまう。社運がかかっている大きな案件。
仕方ないのか。
少し寂しそうな表情を浮かべながら、トミーはOKと。
一時間ほどでホテルに到着。
15分したらロビーに集合。 最後のディナー場所まで徒歩で移動。
上海の下町を初めて間近にみた。
一般庶民の住むアパート。築二十年ほどの。
家賃を聞いたところ、3ベッドルームでなんと日本円で約三十万円。
ただその家賃は外国人や、他の地区から来たものだけ。
地元民はほぼ無料らしい。
なぜなら中国は社会主義国だから。
忘れていた。
中国はそうだったのだ。
あまりにも近代化が進んでいるためすっかり忘れていた。
不思議な思いだった。
ディナーの席はあえてトミーの横へ。
左には砂田さんを指定。
ビジネスの話をしたかったからだ。
もう観光は終わり。
彼らの意向を再認識したのだから。
若いスタッフは相変わらず英語で軽口を叩いている。
でも脳天気な二人ではない。 雄と淳は分かっているのだ。 オレらの仕事は人間関係を築くこと。
国境を超えて出会ったリンキーレーシングのスタッフと仕事を抜きにした友人になること。
最初は無口だった王君も今は常に笑顔。
日本語の発音も習得している。好感度の高い青年だ。
ヘレンに至っては、彼氏のことまで雄に話している。ヘレンは最初からチャーミング、秘書的な仕事をこなしながらもジョークを連発。
とても聡明な女性だ。
今回、この旅でリンキーレーシンググループの会長とはスケジュールが合わず会えなかった。
仕方ないだろう。
彼は多数の会社をもっている。 従業員の総数は1000人以上。 実際はもっと多いのだろう。
彼らは誇張はしない。
会長の年齢は32歳。
驚くほど若いトップ。
その総司とトミーは地元杭州の同級生。
トミーは肩書き以上にリンキーレーシングのトップに近い立場。
今回のプロジェクト。
トミーはきっと会長に任されたのだろう。
どこよりも面子を重んじる国、中国。
もう我々の答えはとうに出ている。
帰国しても変わることはない。
砂田さん、トミーに伝えてほしい。
エナジーモータースポーツとリンキーレーシングの固い絆を結びましょうと。
書面はあとになるが男と男の約束を私は守ると。
流暢な英語で伝える砂田さん。
その言葉を大きく見開いた目と共に聞くトミー。
固い握手を交わした私とトミー。
思わず拍手したすべての参加者。
鳥肌が立った。
涙腺が緩んだがこらえた。
祝いの酒は37度。
この旅で初めて口にしたアルコール。
やけにフルーティーだった。
よし、次は上海で一番の夜景を見に行こう。
タクシーで到着したそこは初めての景色。
壮大なヨーロピアン建築と、近代的な高層ビル。
過剰なまでのイルミネーション。
東京びいきの雄もお手上げ。 すごい、本当にすごい。 リバーサイドを散策しながら更に深まる親交。
スペイン人のジョルディーも良いキャラクターだ。
最高に明るくお茶目。
丁寧なイングリッシュは我々にも聞き取りやすい。
バルセロナから中国に来て三年。
単に世界を放蕩しているわけではない。
熱いハートをもったビジネスマン。
トミーと出会い三年。
トミーの人柄に惚れ、今はリンキーレーシングのスタッフ。,br>
欧米や南米にもバイブを持つ営業マン。
その彼と王君がエナジーモータースポーツのパーツを売ってくれるらしい。
なんとインターナショナルなことか。
トミーが発した。
じゃあ、ホテルに戻ろう。あー今夜は最高だ。
ビールを一杯飲みたい気分だ。
トミーは下戸じゃなかったの?
いままで一滴も飲んでいないはず。
ホテル向かいのファミリーマートで買い出しだ。
その前に提案した。
トミー、もう仕事は終わったよ。 いままで本当にありがとう。
せめて最後の祝杯の費用は私に出させてほしい。
ノー、ここは中国だ。
9月に日本に行くからその時は甘えるよ。
もう一度頼もう。
淳の出番だ。
何を言ったのか分からないがトミーが了承した。
余談だがこの旅で強く感じた。
雄と淳を海外留学させて良かったと。
単に英会話が出来るだけではない。
日本人離れしたコミュニケーション能力には脱帽だ。
部屋で軽く一杯かと思っていたが違った。
ホテルのロビーに場所を作りはじめた。
アオキさん、もう私たちはフレンドではなくファミリーだ。
そうだカードゲームをしよう!!
手慣れた手つきでカードを切るトミー。
シングルイズベストと言っていたトミー。
実はとんでもないプレイボーイ?
缶ビールやワインはすぐに無くなった。
トミーのピッチの早いこと。
彼が今まで飲まなかったのは、彼なりの流儀。
完璧なおもてなしを遂行するための。
またしても感動した。
時刻は12時。
あとは若者だけで楽しんでもらおう。
失礼をわび部屋に戻った。
戻って良かった(^^;)
56度の紹興酒のいっき飲みだったらしい。
|
|