二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
第九回目は・・・
BMWアルピナ B3GT!

・スペック
エンジン型式 S58V30A
最高出力 462馬力(340kw)/7000rpm
最大トルク 71.4kg・m(700N・m)/2500~4500rpm
種類 直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量 2993cc
・最後の「純アルピナ産」
まずこの車のレビューを語るにあたって、知って頂きたいのが「アルピナ」というブランド。
BMWファンの皆様はご存じかと思いますが、「アルピナ」とは、BMWをベースに独自のチューニング、ドレスアップパーツを製造しているメーカー。
誕生は1965年、それ以降2025年の現在に至るまでBMWと共に友好な関係を築きながら、「BMW ALPINA」として半世紀以上にわたりその地位を確立してきました。
アルピナの生産体制は、「少数精鋭」としており、スタッフは約300人、年間製造台数は1200から1700台ほど、大量生産が主流となっている現代において真逆を行く体制で、あくまで「1台のクオリティ」を重視した生産体制。
うち2割が日本に輸出されています。
2026年からアルピナは、商標権がBMWに移り、完全にBMWの傘下となり、
純アルピナと言える世代は現行モデルが最後になりました。
今回レビューさせて頂くB3 GTは、以前レビューさせて頂いたG20 3シリーズをベースとしていますが、手を加えられている部分が無いと言えるほどのチューニングカー。
「なぜアルピナというブランドが現在までその地位を確立出来ていたのか」
その理由が理解できる1台です。

(ワインの製造でも有名だそう)
・タキシードを着た実力派スパイ
アルピナの特徴として、エクステリアがあります

追加されたトランクスポイラー

アルピナ伝統の「クラシカルホイール」と呼ばれる専用ホイール
(スポークは20本と決まっており、これは「真円を保つのに必要なスポークは20本」という独自の哲学によるもの)

フロント下部のALPINAの文字
これらの特徴は「見る人が見ればアルピナとわかる」程度の物
アルピナとはBMWのハイエンドブランドですが、「俺はアルピナだぜ!」と強く主張するわけでもなく、上品に、さり気なくアルピナだというのが分かるくらい。上質な車は自らブランドを主張しないものです。
・シルクのように滑らか、しかし…
エンジンはG82 M4などに搭載されているS58エンジンをベースとしたS58V30A、アルピナでは初めてM社のエンジンをベースとしています。
462馬力と480馬力を誇るM4には劣りますが、最大トルクは700N・m M4を優に超えるトルクを秘めています。(M4は600N・m)
出力特性が3000rpmで最大トルクを発揮、普通に乗るだけでもその豊かなトルクが味わえます。
昔ながらの「シルキーシックス」をさらに突き詰めたようなエンジンで、回転数の上がり方は非常に滑らか。
しかしいざ踏み込むと驚くような加速力、爆発力があり、ここが「実力派スパイ」と感じた部分です。
落ち着いて上品なデザインからは想像できないようなスペックを誇っています。
速さを求めると快適性とは遠くなっていくものですが、アルピナはその2つを両立しており、強力なエンジンからはフラットトルクな一定の加速感を味わえます。
回転数の上昇による唸る感じもなく、あくまで静かですが、一定のサウンド、振動感はあって、運転の楽しさも持っています。

(手が加えられている部分はシリンダーヘッド、コンロッド、クランクシャフトなど数えればキリがありません)
・更に仕上がっている完成度

(「アルピナブルー」と呼ばれる青い皮もアルピナの特権)
・芸術品のようなもの
「アルピナを所有する」ということは「芸術品を所有することと同じ」と私は思います。
トゥールビヨンのように、工業製品が機械的に動くさまが美しく、エンジンからサスペンション、ステアリングなどその動き1つ1つが緻密かつ繊細に練り上げられています。
凄まじいスペックを誇るエンジンと、快適性が高い次元で纏まっていて、例えば普通、20インチ扁平30のタイヤを履くと乗り心地はかなり固くなる筈ですが、アルピナはその硬さをより「心地よい」物に変換しています。
「ドイツで最も小さな自動車メーカー」熟練のエンジニアが仕立てた一台は愛好家が多く、生産台数の少なさから希少な一台になります。
そんな希少な芸術品、タイミングを逃せば次はいつ入庫するかわからないのも納得です。
以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW アルピナ B3GT編でした。

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