二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
今回のレビューはこの車!!!
BMW i8編!!!

・スペック
エンジン形式 B38K15A
最高出力 231PS(170kW)/5800rpm
最大トルク 32.6Kg・m(320N・m)/3700rpm
種類 直列3気筒DOHCターボ+モーター
総排気量 1498cc
・未来を先取りしすぎた?
自動車の世界には、度々「時代を先取りしすぎた」クルマが現れます。
例えばBMWでいうとE65型7シリーズ、テールレンズが繋がるようなデザインは20年前こそ賛否両論でしたが、現代ではスタンダードです。

i8もそういった1台。 登場は2014年、今から約10年以上前に登場した車です。
電動化が進み、ハイブリッド車、EV車は当たり前となった現代ですが、不思議なことに全く古さを感じません。
様々な画期的な機能を引き下げて登場したこちらの車は、
それこそ当時様々な意見が飛び交いましたが、
現代の観点で見ると普通になった機能どころか、むしろ未来的な機能も多数。

今回は、そんなi8を10年以上経過した現代の視点から改めて振り返ってみましょう。
・未来の行き先案内人
i8を語るにあたって欠かせないのが、2014年当時の時代背景。
当時はガソリン、ディーゼル車が主流、ハイブリッド車はあくまで補助的な位置でまだまだ発展段階の時代。
BMWの世代でいうとF30型3シリーズが当時の現役モデルです(私もまだ中学1年生でした)

そんな中、BMWが突如として立ち上げた「i」というブランドから、i3、i8が登場します。
今振り返ると、この2台は単なる新型車ではなく、10年、20年後を見据えた実験車であり、未来への道しるべそのものだったのでした。

・今見ても先鋭的なスタイリング

まず何より、このクルマは圧倒的にカッコいいです。
フェラーリやランボルギーニのようなカッコよさではなく、「未来の乗り物」というイメージです。

空力を意識したボディ形状は今見ても独特で、発売から10年経過した現在でも、街中で見ればほぼ間違いなく振り返られる存在でしょう。
実際、現代モデルのBMWと比較しても、これほど先鋭的なデザインの車は存在しないのではないでしょうか。

内装は完全に「コックピット」です。
着座位置はかなり低く、まるで地面に座るようなイメージ。
しかし意外と乗り込んでしまえば、視界は良好で運転しやすいのも特徴です。
ブルーを基調としたアクセントや包み込むようなレイアウトはロボットに乗っているような気分です。

後部座席は荷物置き程度で無いようなものですが、あると無いとでは大きな差があります。

・「オールドタイプ」は満足できる?

パワートレーンとしては、3機のモーターと1.5Lの3気筒ターボエンジン、基本なエンジンを使わずモーターで走行するプラグインハイブリッドカー
端的に言えばエコロジーな効率の良いユニットという印象です。
しかしi8は運転も楽しめるクルマとして市販化されたスポーツカー、正直なところ環境やエコは関係なく運転が楽しいかどうかが疑問点です。
私はこの時代に大排気量のNAエンジンであるE92を乗るような所謂「ガソリン頭」ですが、そんな人物が乗っても満足できるのでしょうか?

結論から言うと、十分満足できます。
このクルマは、前に2つのモーターが2速のギアを介して前輪を駆動し、後ろにはエンジンと補助モーターが6速のギアを介して後輪を駆動。
そして最大の特徴はここまで複雑な機構でありながら乗り味は違和感なく自然で快適
パワートレーンの総出力は352馬力と、十分すぎるパワーはありますが、500馬力以上の車が自然となった現代では見た目の割には控えめに映るかもしれません。

しかし、実際走り出すと数値では見えない独特の乗り味があります。
EV特有のリニアな加速感は馬力以上のもので、モーターでの加速ののち、自然と3気筒ターボが加わり、その繋がりが何より自然です。
先ほども言いましたが、この自然という乗り味、実は物凄いことでもあります。
2016年当時、似たようなコンセプトのスポーツカーとしてホンダ NSX(NC1)が存在していました。

3機のモーターを搭載し、前輪はモーター、後輪はV6エンジンと、エンジンの大きさや馬力でいうと差がありますが、レイアウトでいうとi8と同じです。
SH-AWDという特殊なシステムを搭載したこちらの車は、4輪それぞれが別々の動きをして、クルマそれ自体はスーパーカーと言っても過言ではないコーナーリングの速さを発揮しますが、乗り味のクセは相当でかなり人を選びます。
理由はその構造にあるのですが、語ると長くなってしまいますので省略。
前輪はモーター、後輪はエンジンという組み合わせはそれぞれが別のトルクの出方をするため、乗り味にクセがあるというのは当然のことのように思えます。

私はむしろ、i8に乗るまではハイブリッドスポーツカーはNSXしか知らなかったので「機械が介入している感」が強いという印象しかありませんでした。
しかしi8の自然さは、ハイブリッドシステムの存在を忘れてしまう程です。
・継承されなかった「贅沢」
i8の特徴は他にもあります。
それは「軽さ」

i8の車重は約1500キロ
これはハイブリットカーとしては異常に軽いです。
例えば現行モデルのG90 M5は2400キロ、現行モデルで近い車重の車はG29型Z4(1540キロ)くらいで、しかもZ4は純ガソリン車でFRの二輪駆動。

エンジンとバッテリー、モーターを搭載するi8はエンジンしか搭載しないガソリン車より軽いということになります。

軽さの理由はカーボンモノコック
ボディ構造のうち、キャビンを形成する部分全てをカーボンで構成する構造になります。
この構造は非常に高価で、数千万クラスのスーパーカーにしか使用されていない構造でした。
しかし、BMWはそれを量産を前提としたi3、i8に採用、専用の工場まで建設し、生産体制そのものをゼロから構築しました。
i8は設計段階で軽さを重視した車だったのです。
以前、G11型7シリーズのレビューで少しお話させて頂きましたが、結果としてこの構造を採用したBMWはi3、i8のみとなってしまいました。

やはりコストが高かったのか、ボディ構造のうち一部をカーボンで形成する方法として継承されましたが、ボディ全てがカーボンとしては継承されませんでした。
・時代が過ぎても、2度とは現れなかった

今改めて振り返ってみると、i8のような車は後にも先にも存在していません。
当時ではi8という車はハイブリットスポーツカーという存在しなかったジャンル、未来的すぎる思想や、スーパーカールックにしては控えめに写るスペックなど、様々な観点で評価することが難しかったでしょう。
時代が経過した現代。
マフラーすら存在しない重量級のファミリーカーがエンジン音を鳴らし、1000馬力を発揮しスーパーカーと比較されるような時代です。


もはや、「0〜100が速い」「馬力がどれだけあるか」というスペックがスポーツカーという基準ではなくなりました。
スペック競争が意味を成さなくなった現代、車の評価基準は「どんな体験を与えてくれるのか」という所でしょう。

現代でも未来的に見えるスタイリング、複雑なシステムを感じさせない自然な乗り心地、そして今見ても魅力的な軽快な動き。
これらはスペックシートには決して書かれません。
スペックでは語れない、数字では見えない、だからこそこのクルマには時代がたっても失われない価値があります。
10年以上の時を経て、ようやくBMW i8に時代が追いついた今、このクルマは販売当時よりもむしろ魅力的に映る一台なのかもしれません。

以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW i8編でした。
前回
BMW 5シリーズ(F10)







