二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
今回は特別編!!!
BMW M3(E92)長期試乗レビュー編!
・スペック
エンジン型式 S65B40A
最高出力 420馬力(309kw)/8300rpm
最大トルク 40.8kg・m(400N・m)/3900rpm
種類 V型8気筒DOHC
総排気量 3999cc
・根強い人気があるM3
未だ人気のあるE92型M3
最初で最後のV8NAエンジンを搭載したモデルになり、このエンジンはE92 E90型M3にしか搭載されていません。
ガレージエブリンにおいては取締役の雄さん、勝成さん(E90)、そして私とスタッフでも愛好家は多く、オーナーであるが故に感じたことは様々。
今回は愛車のM3で新潟県へ旅行に行ってきました。
道中には高速道路はもちろん、ワインディングや路面の悪い山道など様々なシチュエーションがありました。
今、E92 M3を検討している皆様の少しでも手助けになればと思い、長編となりますが是非お付き合いくださいませ。
・余裕を感じるスペック
それでは早速スタートしましょう。
まずは近畿道から北陸自動車道を通り、最初の目的地である新潟県は上越市を目指します。
高速道路においては流石の安定性、現行モデルのG82型M4等と比べると当然ロードノイズは感じますが、うるさいと言う程ではありません。
エンジンは420馬力を発生するV型8気筒、追い越しや合流などパワーが必要な場面では十分、一定速度での巡行も難なくこなします。
特に滋賀県は勾配が強い路面が多かったのですが、軽い踏み込みで登って行き、エンジンを回さなくても十分なので、「唸る」という挙動もありませんでした。
E92に限った話ではありませんが、普段使いではオーバースペック気味に感じる車には「余裕」があり、高速域でもブレない安定性、低い重心、高出力など、あくまでもサーキットを速く走るために設計されていますが、当然高速道路ではその高い性能のおかげで快適に走ってくれます。
しかし乗り心地が良いと言っても流石に長時間運転すると疲れは発生します。
所々SAで休憩を挟みながら上越市を目指します。
(自宅から上越市まで約500キロ、時間にして6時間ほどです)
・意外と効く小回り
最初の目的地、上越市では有名な「オーモリラーメン」を食べに行きますが、駐車場は狭く、満員でした。
E92は全長4.620ミリ、全幅1.805ミリとそこまで大きくなく、ドアは大きいですが、狭い駐車場でも容易に駐車可能です。
上越市では丁度ガソリンも切れる距離、ガソリンとラーメンを補給して新潟市を目指します。
(上越市から新潟市までは2時間あります!)
新潟市では今回の目的地、1年前。E85型Z4で走って「私が今まで走った中で1番楽しかった道」を目指します。
(オーモリラーメンはHIKAKINさん行きつけのお店だそうです!)
・峠で光る「味」
目的地の道は、峠道で、かなり路面は悪く、うねりやギャップの多い道です。
E92のエンジンはNAエンジン、レブリミット8250回転まで回る超高回転型ユニット、アクセルのレスポンスは非常に高く、パワーが欲しい時にいつでも対応してくれます。
特に6000回転から上の領域はかなり鋭く、高回転型エンジン特有の音も合わさって「最高」の一言。
(露天掘りのトンネルも多く、中でのサウンドは他にないほど最高でした)
420馬力は峠ではオーバースペック気味ですが、NAなので扱いやく、危険なパワーの出方はしません。
当然欠点もあります。
気持ちよく走るためには出来るだけ6000回転から上をキープして走りたい所ですが、燃費が非常に悪く、特に山奥にはガソリンスタンドはない為気になるポイントです。
逆に0から3000回転くらいの領域では山では重く感じ、楽しく走れるのに燃費を気にしてしてしまい少し煮え切らない所はありました。
特徴はエンジンだけでなく、ステアリングも。
E92は今主流の電動式ではなく油圧式パワステ、路面の衝撃はハンドルを通じて体に伝わってきます。
特に今回のように路面が悪い状況だとかなりキックバックが多く、それが「車らしさ」であって楽しめました。
実は直列6気筒を搭載する前型のE46 M3と比べ、より大型なエンジンを搭載しているE92ですが、徹底した軽量化により、増加した重量は約60キロに収まっています。
馬力は80ほど増加。
車の動き自体は非常に軽快です。
(景色も最高でした)
・普段使いも可能
さて、旅行で気になるポイントと言えば居住性
E92はクーペですが、後部座席は非常に広く、座っても足がシートに当たらず頭上も広々。
トランクの容量は430L、スーツケースは勿論、お土産の搭載も余裕ですが、トランクはかなり熱を持つので冷蔵品は入れない方が良いかもしれません。
(私もよく家族にE92で買い物に連れ出されます)
新潟でのお土産は日本酒、お米など大きな物も多く、このトランクの広さに助けられた場面は多数ありました。
(みなとのマルシェピアBANDAIでは新潟県の特産品が多数販売されていました)
・総括
E92 M3の魅力はエンジンは勿論ですが、私が一番感じたところは「感応性」
当然「速さ」という面においてはG80型M3やM8の方が上回ります。
しかしエンジンのザラザラとした振動や、ステアリングの感覚、アクセルの反応など「車を操っている」と感じる楽しさにおいては私はE92の方が上だと感じました。(言葉で表現するのは少し難しいですが)
実はE92の意外な特徴として「Sportsモード等の切り替えが存在しません」
つまり電子的なデバイスを介して車の挙動を調整しているわけではなく、「車が持つ本来の味」が全面的に表に出てきている、ということになります。
(存在するのはアクセルの反応が若干良くなるPOWERボタンと脚の硬さを調整できるEDCのみ)
やはり燃費が悪かったり、ドリンクホルダーが出てこなくなったりと小さなトラブルは年式相応で多々ありますが、私はこの車を現在半年程保有して、一切後悔をしていません。
これから先の時代、絶対的な数は必ず減っていきますし、同時に乗れる機会も無くなっていくからです。
例えば10年後に「あの車乗りたかったけどもう無理だなー」となってからでは遅すぎます。
現在進行形で希少になって来ている車です。最初で最後のV8NA 味わうのなら今しか無いと言い切れるでしょう。
以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW E92 M3 編でした。
(今回の旅行では総合1460キロ、17時間運転していました)