二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW 5シリーズ 530e(G30)編
2025年11月15日
二級整備士・輸入車オタクの稲数 侑哉です。
「メカニックとしての視点」そして「車オタクとしての視点」から私が感じた様々な車の乗り味、
魅力等を忖度抜きで解説で紹介していくコーナーです。
少しマニアックな話も含めて皆様に車のことを知っていただければなと思います。
今回は特別編!!!
BMW 5シリーズ 530e(G30)長期試乗レビュー編!

・スペック
エンジン型式 B48B20A
最高出力 184馬力(135kw)/5000rpm
最大トルク 29.6kg・m(290N・m)/1350rpm〜4250rpm
種類 直列4気筒DOHCターボ+モーター
総排気量 1998cc
・PHEVという選択
現在私たちは自動車の変革期にいると言えます。
環境規制によりエコなエンジンや電動化に向かっている現在、ユーザーである私たちには様々な選択肢があり、
純粋なガソリン車やディーゼル車。
電気自動車、ハイブリッド車、そして水素を燃料に走る燃料電池車。
実はBMWにはそのすべての選択肢をラインナップしており、メーカーでこれが可能なのは他にトヨタくらいのもの。
530eはその中でも外部から充電が可能なハイブリッド車、PHEVに当たります。
環境にやさしいハイブリッド車ではありますが、ユーザーである我々からすると「環境とか関係なく車としてどうなの?」と思うのが正直なところ
今回、私の車を車検で預けている間、代車で530eを1週間ほど貸して頂きました。
「こんな良い車借りていいんですか!?」と思いながらもせっかくの車を知れる良いタイミング。
イレギュラーではありますが、長期的にお借りした上での実際に感じたメリット、デメリットを今回はレビュー致します。
今、5シリーズ 530eを検討している皆様の少しでも手助けになればと思い、長編となりますが是非お付き合いくださいませ。

・高い親和性
それでは早速スタートしましょう。
まず最初に感じたことは「5シリーズとハイブリットの相性の高さ」
5シリーズはMモデルのようにガンガンスポーツ走行するような車ではなく、「爽快感は残しつつも、快適に乗れる車」
モーター特有のトルクの太さ、レスポンス、静粛性はガソリン車では出せない味であり、乗り味は非常に滑らか、路面の抵抗や空気の抵抗を感じずにスーッと走っていく印象です。
特に高速走行時には路面に張り付く感じと低重心を感じます。
恐らくですが高速道路を長時間走る上でのアベレージスピードは私のM3を上回ると思います。
単純な速さではM3が当然上回りますが、「同じスピードを出し続けれるか?」と聞かれると、M3は乗り心地が良くなく、燃費も悪く音も大きいので厳しい部分があります。
530eはその点に関して、長時間スピードを出すことに対して「しんどさ」は感じません。
理由はハイブリッド用バッテリー。
バッテリーはかなり重量があり、車重こそ増加しますが、重量物は低い位置にあるので安定性が増します、以前のX7 M60iと同じですね。
低い重心と安定性で、コーナーはスイスイ曲がっていきます。
「運転は楽しいのか?」と言われると「はい」と答えます。
駆動は私の大好きなFR、重量感を全く感じさせない驚くほど曲がるコーナーリングは運転していると笑ってしまうくらいで、1度決めたステアリングに対して迷いがなく、まるでレールの上を走っているようです。

(重量は1910キロ、ノーマルの530iは1690キロ)
・賢く乗る
PHEVの特徴はハイブリッドバッテリーが充電可能ということ
AC200V対応のコンセントがあれば自宅でも充電が可能なところは大きなメリットです
単純な話で言うと、仕事終わりに自宅で充電、次の日の朝出社。というルーティーンであれば50キロ程は電気のみで走行が可能。つまりは出勤、退勤程度であればガソリンは一切減りません。

(充電口にはロックがついているので盗難の心配もなし)
特に自宅では出発時間を決め、その時間に合わせバッテリーを充電しておける機能もあるのもポイント
出先でもショッピングや食事中に充電しておければ基本電気のみで大概の普段使いは可能ではあります。
しかし、バッテリーの関係でトランクはかなり床が高くなっており、荷物の搭載量が減っているのはデメリットです。

(荷物の置き場所に困る場面は少しありました)
・環境に合わせて対応できる賢さ
走行モードの切り替えは多数あり、ざっくり分けるとEV、ハイブリッド、充電、スポーツといった具合。
当然常にバッテリーは満タンにできるわけではないので基本はハイブリッドで走ることとなると思います。
乗り味にはすこしクセがあり、回生ブレーキの扱いには慣れを必要とします。
基本どのモードでもアクセルを離した瞬間エンジンブレーキが強めにかかるイメージ
慣れてしまえば殆どワンペダルのみでの走行が可能。乗り方がわかってくると、例えば信号のかなり手前でアクセルを抜いたりブレーキ自体はあまり踏まずに「効率的に」バッテリーを充電して走っていけるようになるかと思います。

私も慣れるまでは乗りにくさを感じましたが、今では全部これにしてくれた方が楽なのに…と思うくらいです。
つまりは乗れば乗るほど受ける印象はかなり変化する車です。

(車の動きは車内のモニターで確認可能)
・環境に配慮した車だけに留まらない
530eは環境にやさしく燃費が良いエコカーというのは間違ってはいませんが、このハイブリッドの本質は「燃費や環境のための」ではなく「走りのための」という印象を受けました
動力として、モーターとエンジンは真逆の特性を持っています。
モーターはアクセルを踏んだ瞬間MAXでパワーが発揮されますが、速度が上がれば抵抗が大きくなり、高速域ではパワーが出ません。
エンジンは逆に低回転域ではMAXで出力が出ず、ある回転数まで回さないと出力が発揮されません。
530eはエンジンの弱点である低回転、低速域をモーターで補い、モーターが苦手とする高回転、高速域をエンジンで補うので、良い所取りな特性になっています。
反面、2つのシステムを搭載しているので、重量増加というデメリットを抱えていますが、そこは先ほど申し上げた通り重厚な乗り味へと昇華。
この2つのシステムの親和性の高さと、デメリットをメリットに変えてしまう5シリーズ本来のコンセプトが1番のポイントと言えるでしょう。

(挙動自体はオーソドックスなFR、乗りやすくも楽しめます)
・人気には理由がある
私が個人的に感じていることとしては「エブリンに入庫した5シリーズはすぐ売れていく」ということ
EVO G30.1は特に人気で、入ってきては売れを繰り返している印象があります。


しかし実際に乗ってみると「確かにこれは皆欲しがるわ...」と思うほど完成度が高く、実際私もずっと乗っておきたいくらいでした。
最初の印象は確かにクセを感じますが、乗れば乗るほど、その出来の良さ、組み合わせの親和性、そして走りと様々な面で、良い部分が染み出してくるような、「味のある」1台です。
以上
二級整備士・稲数の試乗インプレッション・・・BMW 5シリーズ 530e(G30) 編でした。


(今回のインプレッション、かなり楽しまさせていただきました)









